浴衣の種類|「生地」と「染め」による特徴や選び方を徹底解説!

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夏の風物詩「浴衣」は、生地の素材や染めの種類によりさまざまな特徴があります。

浴衣の代表的な素材である木綿から、麻やポリエステルをはじめ、特別感のある絹紅梅など、染め方は注染から絞り染めなど多種多様。浴衣を選ぶときに選び方で迷うこともあることでしょう。

今回は浴衣の種類について「生地」と「染め」のそれぞれの特徴を着物のプロがわかりやすく解説します!ぜひ浴衣選びの参考にしてみてください。

目次

浴衣の「一般的な生地」3種類と特徴

浴衣は日本の伝統的な夏の装いとして、さまざまな素材と技法で作られています。

一般的に使用される浴衣生地の3種類について、それぞれの特徴と魅力をご紹介します。

①基本の浴衣生地「綿コーマ(木綿)」

綿コーマ」は、浴衣のもっとも一般的な素材である平織りの木綿地です。

透け感のない綿コーマは、手ぬぐいの生地感を想像してもらうとイメージしやすいでしょう。通気性と吸汗性の良さはコットン100%ならではの魅力。綿コーマの浴衣は様々な柄や色があり、伝統的な浴衣らしい生地感はとくに花火大会や夏祭りにおすすめです。

絹紅梅や綿絽のように、生地に特徴的な素材感はなくシンプル。衿は付けず、浴衣本来の着方で肌着のうえに着用するのがベストです。素足に下駄を合わせてシンプルに着こなしましょう。

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②安価で手軽な「ポリエステル」

ポリエステル製」の浴衣は、発色が良く光沢のある滑らかな質感が特徴です。

天然繊維の浴衣に比べて価格が安く、デザインのバリエーションが豊富なため、初めて浴衣を購入する方にもおすすめ。ポリエステル素材の浴衣は、くっきりとした柄や鮮やかな色が特徴で、個性を表現しやすいメリットがあります。

しかし、天然素材に比べて肌触りや通気性・吸汗性などは劣るため、好みや用途に応じて選ぶのがベストです。お手入れが簡単でシワになりにくいため、洗濯後のアイロンがけが不要なのはメリットです。

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③シャリ感のある「麻」

麻」は、ハリがありさらりとした着心地が特徴の盛夏向けの浴衣素材です。

麻素材は吸湿性と速乾性に優れ、汗ばむ季節に最適です。生地自体にシャリ感があり、肌に張り付かないため快適な着心地が楽しめます。ただしかなり透け感が強いので、夏用の和装肌着の着用が必須。ほかにも夏用の長襦袢を着て、夏着物風に着こなすのもオシャレです。

麻の浴衣には、あらかじめ染められた糸で模様を織り込んだ「先染め」と、白い麻生地に柄を染めた「後染め」があります。先染めはざっくりとした素朴な印象で、後染めは夏着物の小紋感覚で着られる優雅な雰囲気が魅力です。

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浴衣の「特別感のある生地」6種類と特徴

一般的な浴衣生地を紹介したところで、特別感のある6種類の浴衣生地とその特徴について紹介します。

それぞれの生地には独自の風合いや機能性があり、着用シーンに合わせて楽しむことができます。

①ハリのある木綿生地「綿紬」

「綿紬(めんつむぎ)」とは、紬織と同様に節のある木綿糸を使用したハリのある手触りが特徴の木綿生地です。

紬の着物のような糸の節が高級感を感じさせるため、浴衣の素材として人気を集めています。また、節のある糸のおかげで浴衣の生地が肌に張り付かず、シャリ感のある涼し気な着心地を楽しめるのもポイントです。

生地自体のニュアンスが魅力的で、ワンランク上の浴衣を求める大人の女性にぴったりの素材といえます。

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②木綿×麻の交織「綿麻」

「綿麻(めんあさ)」とは、木綿と麻を織り交ぜた浴衣生地です。

綿糸と麻糸を織り交ぜることで、吸湿性・通気性に優れるのと同時に見た目にも涼しげです。麻には通気性が高く速乾性があるというメリットがありますが、シワになりやすいというデメリットもあります。そこに木綿を織り交ぜることで、麻のデメリットを軽減しつつ柔らかい肌触りを実現します。

木綿と麻の割合によって生地の風合いが変わるため、多様な表現が可能です。浴衣の生地では綿80%・麻20%が多く見られます。木綿100%の生地と比べて涼し気な見た目になるので、一味ちがった浴衣姿を目指す方におすすめです。

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③木綿×絹の交織「絹紅梅」

「絹紅梅(きぬこうばい)」とは、薄手の絹糸を地に太めの木綿糸で格子状の凹凸を織り出した交織生地です。

絹紅梅は、最上級の浴衣素材として知られています。絹ならではの透け感と、太い木綿糸によるワッフル状の凹凸が特徴。太い木綿糸のおかげで肌に張り付かず、涼やかな着心地が実現します。透け感が強く軽いので、一枚で着るのではなく、夏の長襦袢を合わせて夏着物として装うのがおすすめです。

たとえばレストランや料亭での夏の食事会など、特別な場面で高級感のある着姿を演出した場合に適しています。

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④ 透け感のある「綿絽」

「綿絽(めんろ)」とは、木綿の生地で絽目(ろめ)と呼ばれる隙間を織り出した透け感のある生地です。

絹の夏着物である「絽小紋(ろこもん)」に近い見た目で、清涼感と高級感がポイントの綿絽。綿コーマよりも軽く、風を通し涼やかです。生地が透けるので、夏用の和装肌着または夏用の長襦袢を着用しましょう。

浴衣を夏小紋風に着こなしたい方や、人とちがった浴衣をお探しの方におすすめです。

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⑤シボの強い麻「小千谷縮」

「小千谷縮(おぢやちぢみ)」とは、独特のシボが魅力の麻織物です。

強い撚りを掛けた緯糸を使用して織られることで、シボと呼ばれる凹凸が生まれます。シボがさらりとした肌触りを提供し、夏の暑さでも快適に着られるのが特徴。

ラミー糸を使用した機械織りの小千谷縮は比較的手ごろな価格で提供されており、手軽に楽しむことができます。

衿を付けて着物としても楽しめるのもポイント。伝統的な風合いと高い機能性を兼ね備えた小千谷縮は、高級浴衣のひとつとしてワンランク上の浴衣姿を実現します。

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⑥夏向けポリエステル「セオアルファ」

「セオα(アルファ)」とは、東レが開発した夏向けの高級ポリエステル素材です。

吸湿・速乾・通気性に優れた生地で、ポリエステルであってもさらりとした夏場にぴったりの涼し気な着心地。自宅で簡単に洗える上に、シワになりにくいのも魅力。木綿浴衣は洗濯後のアイロンが必須ですが、セオアルファの浴衣は洗濯後に乾かすだけでそのまま着用が可能です。

ふりふや撫松庵などのブランドからもセオアルファの浴衣が出ているため、さまざまなデザインの浴衣から好みの一着を選ぶことができます。

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浴衣の「染め技法」7種類と特徴

浴衣は生地だけでなく、染めの技法にもさまざまな種類があります。

伝統的な浴衣の染め方の特徴をおさえることで、浴衣選びがさらに楽しくなりますよ。

①浴衣の代表的な染め方「注染」

「注染(ちゅうせん)」とは、明治20年代から始められた手拭いや浴衣の伝統的な染色技法です。

染料を生地に直接注ぎ込むことで、色が布にじんわりと染み込み、独特のぼかしやグラデーションが生まれます。他の染色技法では再現しにくい、柔らかく自然な色の移り変わりが魅力です。さらに生地を重ねて複数枚まとめて染めることができるので、コストを抑えられる点も特徴。

注染染めの浴衣とプリント浴衣の見分け方は、裏地を確認することです。

注染染めは布の表と裏に均一に染料が浸透するため、両面に同じ柄が鮮やかに出ます。機械でプリントされた浴衣とのちがいを見極めたい方は、裏地に柄があるかどうかチェックしてみてください。

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②江戸時代から続く「長板中形」

「長板中形(ながいたちゅうがた)」とは、日本に古くから伝わる型染めの技法のひとつです。

長板中形は、長い木の板(長板)を使って布を固定し、型紙を用いて染色します。江戸時代中ごろから浴衣の染めに利用され、藍の液で浸け染めするため、生地の白と藍の美しさのコントラストが「江戸っ子好み」で当時の庶民に好まれたと言います。

多くの工程が手作業で行われるため、職人の高い技術と経験が求められる高級浴衣です。型紙を使った模様の正確な配置や、防染糊の均一な塗布、染料の適切な染み込み具合などは、熟練した職人の技術によって支えられています。

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③有松絞りで有名な「絞り染め」

有松絞りで有名な「絞り染め(しぼりぞめ)」とは、日本でもっとも古い染織技法です。

生地を糸で括る、または折り畳んで板に挟むことで、独特の模様とシボを生み出します。絞りの浴衣は生地が薄手で軽く、柔らかな着心地とシボでとても涼しいのが魅力です。職人の手によって絞りの味わいは異なり、一枚一枚異なる個性を持つ「世界にひとつだけ」の浴衣を着られるのも特徴。浴衣だけでなく、高級振袖である「絞りの振袖」も芸能人の着用などで話題になりました。

伝統的な手作業で作られる絞りの浴衣は、現代でも幅広い世代から人気を集めています。

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④職人の手間暇の結晶「引き染め」

「引き染め(ひきぞめ)」とは、もともと型染めや無地染めで使われる刷毛染めの技法です。

浴衣の中でも絹紅梅や奥州小紋などの高級浴衣の染色に欠かせない染色技法です。約7mの長板(約7m)に貼った生地の上に型紙をのせて、防染糊(ぼうせんのり)を置いて乾かし、刷毛を使用して染料を塗っていく地染めの技法。

手間がかかる上に、熟練の職人の高度な技術が必要な分、発色が美しく、伝統的な美しさが感じられます。

引き染めの浴衣は夏の小紋に近い染め柄で、夏の長襦袢の上に着て夏着物として装うのにもぴったりです。

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⑤麻の浴衣に多い「先染め」

「先染め(さきぞめ)」とは、先に染めた糸を織り上げて柄を表現する技法です。

「後染め(あとぞめ)」の技法である注染や引き染めとは異なり、生地を織る前の段階で色や柄を決定します。デザイン案に応じて織りあげた時に柄になるように糸を染めます。格子模様や縞模様、幾何学的なデザインが特徴で、浴衣では麻の浴衣や小千谷縮に多く見られます。

織物ならではの素朴さが魅力で、縞柄や格子柄などのシンプルな先染め浴衣は夏らしい風情に溢れています。

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⑥独特な味わい「ローケツ染め」

「ローケツ染め」とは、注染の技法と似た糊置きを行い、生地にロウを付着させる独特な染色法です。

ロウが割れる際に生じる微細なひび割れが風合いをもたらし、独特のムラ感と味わいが特徴です。職人の技術と手間のかかる技法を要する高級浴衣ですが、手作業でしか表現できない美しい模様は唯一無二のものであり、多くの着物ファンに愛されています。

>>「ローケツ染め」の浴衣を詳しく見る

【浴衣】生地や染めの種類による味わいを楽しもう

浴衣は生地や染織技法の種類により、それぞれの魅力があります。生地や染めの特徴を踏まえて浴衣を選ぶことで、より特別感のある自分好みの浴衣姿で夏のイベントを楽しむことができますよ。質感や柄、色合いなどから、ぜひ自分だけの一着を見つけてください。

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この記事を書いた人

長年の呉服店勤務経験を活かし、現在は着物アドバイザーとしてライター業を中心に活躍中。着物や振袖を楽しむためのお役立ち情報を発信している。4才男児の母親。

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