新郎新婦の門出を祝う結婚式や披露宴では、主に近しい親族の既婚女性で「黒留袖(くろとめそで)」を着用される方も多いでしょう。荘厳で美しい黒留袖姿をさらに品良く、華やかに引き立てるのが「髪飾り」です。
しかし、「どんな髪飾りを選べばいいの?」「選んだものが派手すぎないかしら?」「マナーはある?」と、悩んでしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。
この記事では、黒留袖の格式にふさわしい髪飾りの選び方から、年齢やシーンに合わせたデザインのポイント、そして知っておきたいマナーまで、着物のプロが徹底解説します。お母様やご親族の皆様が自信を持って晴れの日を迎えられるよう、最適な髪飾り選びを全力でサポートいたします。
黒留袖に合う髪飾りとは?基本とマナーを知ろう
黒留袖の格式に合わせた髪飾り選びの基本
黒留袖は、既婚女性が着用する最も格式の高い礼装です。結婚式や披露宴で、新郎新婦の母親や親族が着用するのが一般的ですよね。そのため、合わせる髪飾りも、その格式にふさわしい上品で落ち着いたものを選ぶことが鉄則です。
派手すぎるものやカジュアルすぎるものは避け、黒留袖が持つ品格を損なわないように配慮しましょう。
【黒留袖に合う髪飾りの特徴】
- 素材は上質に:べっ甲、漆塗り、蒔絵(まきえ)、パール など、日本の伝統的な美意識を感じさせる素材が最適です。金や銀をあしらったものも、上品な輝きを添えてくれます。
- デザインは上品・古典的・縁起の良いものを:鶴や亀、松竹梅などの吉祥文様(きっしょうもんよう) は、お祝いの席にふさわしい華やかさをもたらし、縁起の良さを象徴します。
- 大きさのバランス:大きすぎると派手な印象に、小さすぎると存在感が薄れてしまいます。ご自身の顔の形や髪型、そして全体のバランスを見て、最適なサイズを選びましょう。
年齢に合わせた髪飾り選びのヒント
髪飾りは、年齢に合ったものを選ぶと、より一層美しく見えます。
- 20代~40代の比較的若い世代: 黒留袖は第一礼装であることを忘れずに、落ち着いた雰囲気の中にも、やや華やかさのあるデザインを選んでみましょう。例えば、パールの粒の大きさや配置、かんざしの装飾などに少しだけ工夫を凝らすことで、上品さを保ちつつ若々しさを演出できます。
- 50代以上の方: より上品で落ち着いたデザインがおすすめです。べっ甲や漆塗りのような、重厚感のある素材を選ぶことで、大人の女性ならではの魅力を引き出すことができます。パールのイヤリングなど、他のアクセサリーとのバランスも考慮し、全体的に調和の取れたコーディネートを目指しましょう。ただし、その人ごとの雰囲気に大きく差があるため、華やかな雰囲気が似合う方は華やかさのある髪飾りを着けてもまったく問題ありません。

年代による選び方も考慮しつつ、ご自身の雰囲気に合わせて似合う髪飾りを選んでOKです。
シーン別!髪飾り選びのポイント
結婚式で黒留袖を着用するシーンによっても、髪飾りの選び方は変わってきます。
- 新郎新婦の母親として参列する場合: 主役である新郎新婦よりも目立たないよう、そして母親としての品格を保つために、控えめで上品な髪飾りを選ぶのがマナーです。華美でないデザインの上品なかんざしや、パールのUピンなどをさりげなくつけるのがおすすめです。
- 仲人婦人・親族として参列する場合: 新郎新婦の母親で参列する場合よりも、少し華やかな髪飾りを選んでも問題ありません。ただし、あくまで主役は新郎新婦であることに変わりはないので、派手すぎるものは避けましょう。ラインストーンがあしらわれたかんざしや、少し大きめのパールの髪飾りなどが、華やかさをプラスしつつも品格を保てます。
- 結婚式の時間帯による選び方:
- 昼間の結婚式:光沢を抑え、控えめで上品な髪飾りがふさわしいとされています。
- 夜の結婚式:照明の演出なども考慮し、少し輝きのある華やかな髪飾りを選ぶと、より場にふさわしい装いとなります。
黒留袖におすすめの髪飾り|種類とデザイン
黒留袖にふさわしい髪飾りの中から、特におすすめの3つの種類をご紹介します。
1.伝統的な美しさ「かんざし」
黒留袖に最も合う髪飾りとして、まず挙げられるのがかんざしです。日本の伝統的な髪飾りであり、その上品な美しさは、黒留袖との相性抜群です。
- 漆塗りやべっ甲、蒔絵のかんざし:落ち着いた印象を与え、大人の女性の魅力を引き出してくれます。
- パールやラインストーンがあしらわれたかんざし:華やかさをプラスし、お祝いの席にふさわしい装いを演出してくれます。
- 種類とデザイン:一本挿しや二本挿しなど様々な種類があり、髪の長さや髪型に合わせて選びましょう。古典柄からモダンなデザインまで豊富にあるので、黒留袖の柄や色合いに合わせて選ぶと、より洗練されたコーディネートになります。



上品で落ち着いた雰囲気のかんざしなら、以下のアイテムがおすすめ。控えめかつ上質な印象で、黒留袖の格式に合います。



華やかさをプラスしたい方は、漆塗り風のかんざしに金箔とパールがほどこされたこちらの髪飾りがおすすめです。
2.上品な輝き「パール」
パールは、黒留袖に上品な輝きを添えてくれる、人気の髪飾りです。
- 大きさや数で印象が変わる:小粒のパールは控えめで上品に、大粒のパールは華やかで豪華な印象を与えます。年齢や好みに合わせて選びましょう。
- 色で個性をプラス:白やクリーム色だけでなく、ピンクやグレーなどのパールもあります。黒留袖の色合いに合わせて選ぶと、よりおしゃれな装いを楽しめます。
- 他のアクセサリーとの統一感:イヤリングなど、他のパールアクセサリーと合わせてコーディネートすると、統一感のあるスタイルが完成します。



パールとラインストーンの華やかなヘアコームならこちらがおすすめ。見える部分が多くないので、さりげない華やかさを添えてくれます。



しっかりとパール部分を見せたい方は以下のかんざしが◎。末広がりで結婚式にふさわしい縁起のよいデザインです。
3.モダンなアレンジ「ヘアアクセサリー」
近年では、ヘアコームやヘアクリップなど、モダンなヘアアクセサリーを黒留袖に合わせる方も増えています。
- 選ぶ際の注意点:かんざしやパールに比べてカジュアルな印象を与えるため、上品なデザインで、黒留袖に合う素材を選ぶことが重要です。カジュアルすぎるものや派手すぎるものは避けましょう。
- おすすめ素材・色:べっ甲風のヘアコームや、ラインストーンがあしらわれたヘアクリップなどは、黒留袖にも合わせやすいです。色も、金、銀、黒などの落ち着いた色を選ぶと、黒留袖との調和が図れます。
これだけはNG!黒留袖に避けるべき髪飾り
せっかくの格式高い黒留袖を台無しにしないためにも、避けるべき髪飾りをしっかり把握しておきましょう。
避けるべき髪飾りの特徴
- 大きすぎる・派手すぎるもの:黒留袖の上品さを損ない、主役である新郎新婦よりも目立ってしまう可能性があります。
- カジュアルすぎるもの:プラスチック製の安価なものや、キャラクターもの、アニマル柄などは、黒留袖の格式には合いません。
- 造花:黒留袖に造花などの髪飾りは華美になるので避けたほうが無難です。
- ファー素材のもの:カジュアルな印象を与えるため、フォーマルな場にはふさわしくありません。
具体的なNGアイテム例
- キャラクターもの、ブランドロゴが大きく入ったもの:幼稚な印象を与え、格式に合いません。
- 花嫁と被る可能性のある白い大きな花飾り:花嫁は白いウェディングドレスに白い花飾りを付けるのが一般的です。参列者が白い大きな花飾りを付けると、花嫁と区別がつきにくくなるため、避けるのがマナーです。
- その他、派手すぎる色やデザイン、安っぽい素材の髪飾りは避けましょう。
迷った場合は、呉服店や着物専門店のスタッフに相談するのが一番確実です。
髪型とのバランスも重要!美容室での相談がおすすめ
髪飾りを選ぶ際は、ご自身の髪の長さや髪型とのバランスも非常に大切です。
髪の長さと髪飾りのバランス
- ショートヘアの場合: ショートヘアの場合は、無理に髪飾りを付けなくてOKです。もし付けたい場合は小さめの髪飾りを控えめに付けるのがおすすめです。大きすぎるとバランスが悪く、アンバランスな印象を与えてしまう可能性があります。さりげなく上品なデザインを選びましょう。
- ロングヘアの場合: アップスタイルできれいにまとめ、多少大きめの髪飾りを付けても華やかになります。首筋がすっきりと見え、女性らしさを引き立てることができます。髪の量や質も考慮し、最適なサイズを選びましょう。
▼黒留袖×ショートヘアは髪飾りなしでOK。





私の母は肩につかない短めのショートヘアなので、髪の毛をきれいにセットするのみで髪飾りは着けませんでした。ショートカットなら髪飾りはなくても全く問題ありません。
美容室でのヘアセットと相談が安心
結婚式当日は、プロの美容師にヘアセットしてもらうのがおすすめです。
- 最適なヘアスタイルを提案:美容師は、髪の長さや量、顔の形などを考慮して、黒留袖に合う最適なヘアスタイルを提案してくれます。
- 髪飾り選びのアドバイス:黒留袖の色柄や、あなたの雰囲気に合わせて、髪飾りの選び方やつけ方のアドバイスもしてくれます。事前に相談しておくと、より安心ですね。
- 清楚で上品なまとめ髪が基本:黒留袖に合うヘアアレンジは、清楚で上品なまとめ髪です。トップにボリュームを出しすぎず、襟足をすっきりとまとめるのがポイント。前髪は、斜めに流したりアップにしたりすると、上品な印象になります。
【まとめ】黒留袖には上品な髪飾りで格式ある装いを
黒留袖に最適な髪飾りを選ぶことは、あなたの装いをより一層引き立て、特別な一日を美しく彩るために重要です。この記事でご紹介したポイントを参考に、マナーを守りつつ、ご自身にぴったりの髪飾りを見つけてください。黒留袖の格式、年齢、そして着用シーンを考慮し、髪の長さや髪型とのバランスも意識して、全体のコーディネートが調和するように心がけましょう。
髪飾り選びの際は礼装のマナーを守り、新郎新婦の晴れやかな門出を格式ある装いで祝福しましょう。