着物の種類は多く、難しいと感じることも多いことでしょう。
「着物って何種類あるの?」
「写真を見てもどの着物か見分けがつかない..」
とお悩みの方も。ただし、着物の種類を画像を見ながらおおまかにおさえることで、着物がぐっと身近に感じられますよ。
今回は着物の全種類と特徴について、呉服店に長年勤務した着物のプロがわかりやすく解説します。この記事を読めば、着物の基本的な種類についての知識が身につきますよ。
着物の種類によっては「着用画像」と「お店で販売されているときの商品写真」の両方を掲載しますので、ぜひ参考にしてみてください。
着物の種類【一覧】
代表的な着物は以下の14種類です。
- 白無垢(しろむく)・色打掛(いろうちかけ)
- 喪服(もふく)
- 振袖(ふりそで)
- 黒留袖(くろとめそで)
- 色留袖(いろとめそで)
- 訪問着(ほうもんぎ)
- 付け下げ(つけさげ)
- 色無地(いろむじ)
- 小紋(こもん)
- お召し(おめし)
- 紬(つむぎ)
- 浴衣(ゆかた)
- 木綿のきもの(もめんのきもの)
- ウールのきもの(ウールのきもの)
それぞれの特徴や格、着用シーンなどについて画像とともにみていきましょう。
白無垢(しろむく)・色打掛(いろうちかけ)
白無垢や色打掛は、結婚式や前撮りで新婦が着用する花嫁衣裳です。
どちらも同じ「打掛」ですが、一番外側に着る打掛と着物の色が白いのが白無垢、さまざまな色柄がほどこされたものが色打掛と呼ばれます。
喪服(もふく)
喪服とは、黒一色で染められた無地の着物です。
黒紋付(くろもんつき)や黒喪服(くろもふく)とも呼ばれます。
葬儀や告別式などの弔事で着用し、背中・後ろの両袖・両胸にひとつずつ紋(もん)を入れる五つ紋がしきたりです。
振袖(ふりそで)
振袖は、未婚女性のみが着用可能な正装の着物。
袖が長く華やかな柄付けが特徴で、成人式の衣装としておなじみです。
袖丈の長さによって大振袖(本振袖)、中振袖、小振袖の3種類にわかれます。
- 大振袖(おおふりそで) : 袖丈115㎝以上。結婚式や披露宴の花嫁衣裳として着用。
- 中振袖(ちゅうふりそで): 袖丈約95~115㎝。主に成人式や結婚式に出席する際に着用。
- 小振袖(こふりそで) : 袖丈約85~95㎝。袴とあわせて卒業式などで着用。
黒留袖(くろとめそで)
黒留袖とは、既婚女性のお祝いの席におけるもっとも格の高い着物です。
江戸褄(えどづま)と呼ばれることも。
結婚式などの主催者側が着る改まった装い=「第一礼装(だいいちれいそう)」に該当し、
結婚式や披露宴で新郎新婦の母親や近しい親族、仲人夫人が着用します。
生地の色は黒で上半身は無地、裾だけに縫い目をまたがり柄が描かれた「絵羽模様(えばもよう)」。
紋(もん)はもっとも格の高い「五つ紋」で、背中・後ろの両袖・両胸にひとつずつ家紋を入れる決まりがあります。
色留袖(いろとめそで)
色留袖とは、黒以外の色で生地が染められた留袖です。
柄のつき方は黒留袖と同じ(上半身は無地、裾のみに絵羽模様)ですが、
未婚・既婚を問わず着用できる格の高い正装の着物です。
紋の数と仕立て方によって格の高さと着用シーンが変わります。
- 五つ紋 + 比翼仕立て : 黒留袖と同格。結婚式や披露宴で新郎新婦の親しい親族、叙勲など。
- 三つ紋 or 一つ紋 : 訪問着と同格。親戚の結婚式、祝賀会、子どもの入学式や卒業式など。
訪問着(ほうもんぎ)
訪問着は、留袖の次に格の高い着物です。
「準礼装(じゅんれいそう)」=第一礼装の次に格の高いフォーマルな装いで、未婚・既婚を問わず着用できます。
縫い目をまたがり柄が描かれる「絵羽模様」で、衿、胸、肩、袖、裾周りに模様があるのが特徴。
訪問着は親戚や知人の結婚式や披露宴をはじめ、子どもの入学式や卒業式、七五三などの成長行事などフォーマルなシーンで活躍します。
付け下げ(つけさげ)
付け下げとは、訪問着の略式の着物です。
訪問着ほど大げさでない控えめな柄付けが特徴で、「附下(つけさげ)」とも表記されます。
柄は左の胸と袖にワンポイント、上前に柄が裁ち目をまたがず描かれます。現在は訪問着と同じように、縫い目で柄がつながる絵羽模様の「付け下げ訪問着」も。
呉服店で販売される時に反物の状態なのが「付け下げ」、着物の形に仮縫いされているのが「訪問着」と見分けられます。
紋やあわせる帯、小物の組み合わせで格を変化させられる便利な着物です。
- 紋なし + カジュアルな名古屋帯 : 小紋と同格の略礼装として、ランチ会やなど。
- 一つ紋 + フォーマルな袋帯&小物 : 訪問着と同格の準礼装として、結婚式や入学式、卒業式やお茶席など。
色無地(いろむじ)
色無地は、黒地以外で染められた無地の着物です。
柄のない着物だけに、染める前の白生地の織柄=「地紋(じもん)」により印象が変わります。
ひとつでも紋が入れば訪問着と同格程度に、紋がなければ小紋感覚で街着として着られます。
紋やあわせる帯によって着用シーンの変化する便利な着物です。
- 紋あり : 訪問着と同格の準礼装として、結婚式や七五三、入学式、卒業式など。
- 紋なし + フォーマルな袋帯 : 付け下げと同格の略礼装として、祝賀会や同窓会、パーティーなど。
- 紋なし + カジュアルな袋帯 : 小紋と同格の街着として、観劇やランチ会など。
小紋(こもん)
小紋とは、さまざまな色柄が繰り返しのパターンで染められた着物です。
全体に柄のある「江戸小紋(えどこもん)」や「総柄小紋(そうがらこもん)」、ところどころに柄が散りばめられた「飛び柄小紋(とびがらこもん)」など、バリエーションが豊富です。街着として軽いお出かけから着られる気軽な着物です。
柄の雰囲気や色合い、あわせる帯によって色々なシーンで着用できます。
- 一般的な小紋 : 街着として観劇やランチ会、街歩きなど。
- 江戸小紋 + 一つ紋 : 色無地と同格の略礼装として、結婚式やお茶席など。
- 上品な雰囲気の飛び柄小紋 + フォーマルな名古屋帯 : レストランウエディングや軽いパーティーなど。
お召し(おめし)
お召しとは、糸に色を染めてから生地を織り上げる「先染め(さきぞめ)」の着物です。
無地感覚のものから縞柄や織柄が表現されたものまでさまざま。
街着としてお出かけで着るほか、紋をつければ色無地と同感覚でフォーマルな席でも着用可能です。
紬(つむぎ)
紬は、主に紬糸(つむぎいと)を材料に織られた織物の着物です。
日本全国の産地で個性豊かな紬がつくられており、大島紬、結城紬、牛首紬が「日本三大紬」と呼ばれています。
趣味性の高い紬は、基本的にはカジュアルな装いです。日常着から街着として気楽なお出かけにぴったりの着物です。
浴衣(ゆかた)
浴衣は、着物のなかでもっとも格の低いカジュアルな装いです。
夏の遊び着として夏祭りや花火大会を中心に着用します。かつては寝間着や湯上り着として着られており、現在でも旅館などで用意されています。素材は木綿が中心。
基本的には浴衣一枚で着ますが、柄の雰囲気や素材によっては下に長襦袢をあわせて着物風に着ることもできます。
木綿(もめん)のきもの
木綿のきものは、浴衣と同じ木綿素材の素朴な着物です。
紬のように日本全国のさまざまな産地で生産されています。
自宅で水洗いができるお手入れのしやすさが魅力のひとつ。お稽古や近所のお出かけなどのカジュアルなシーンを中心に、普段着として日常的に着られる気楽な着物です。
ウールのきもの
ウールのきものは、ウール素材のカジュアルな着物です。
素材が毛のため冬でもあたたかいのが特徴。
絹糸を織り交ぜた「シルクウール」は、街着としてちょっとしたお出かけにも着られる雰囲気です。
さいごに
今回は、代表的な着物の種類について画像をまじえて紹介しました。
着物の種類は多いですが、はじめはおおまかに把握しておけば十分ですよ。
着物をこれからはじめる方には「着物の教科書的な書籍」を一冊持っておくのもおすすめです。
本が手元にあると、着物のTPOやあわせる帯や小物などについてさっと調べられて便利ですよ。
ちなみに私が今でも参考にしている書籍はこちら。
現代の着物の常識や着こなし方についてもわかりやすく解説されており、
とてもためになる一冊です。
掲載されているコーディネートも素敵なので、眺めるだけでも楽しい気持ちになりますよ。
ほかにも着物好きの方には以下の本もおすすめしたいです。
着物の柄によく使われる文様についてまとめられた本で、古典柄の季節や意味が網羅的に掲載されています。
柄の意味などを知ることで、着物や帯の装いがより一層楽しくなりますよ。